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2017年8月10日 (木)

巻かなかった世界28

このTシャツはテミンの想いがこもってるんだ、やっぱり洗って返そう。

それさ、バンビにやるから。

え?でも

いいんだ、おれには小さいし。それよりさっさと風呂入って寝ようぜ。

ごまかすように話を打ち切ったユノには、何か考えがあるような気がしたから、言う通りにすることにした。

先にお風呂に入ったユノは、やっぱりソファーベッドで寝てて、ユノをベッドに寝かせるのはもうあきらめた。

その代り、家事は手抜きしないでしっかりやろうと心に決める。

シングルベッドのとなりに少しだけ低いソファーベッドが、スペースの都合でくっつけて置いてあるのってなんかおかしいけど、すぐ近くからユノの寝息が聞こえて、すごく安心して眠れた。

翌朝遅く、朝昼兼用の食事を作ってローテーブルに並べたところへユノが起きてきて、大げさに喜んで食べてくれてる途中でまた電話がかかってきた。

悪い、バンビ。今日も仕事になった。服買いに行くのは今度にしよう、な?

はい。

もともとぼくは必要ないって言ってるんだから。

もし出かけるときは、どれでもバンビがいいと思う物着てけばいいからな。

はいはい。

それから、子どもに留守番させるときみたいに、あれこれ言いおいて、ユノは仕事に出かけていった。

ぼくは、洗濯をして、食器を洗って、掃除して

あ、何時頃帰ってくるか訊くの忘れた。

携帯がないから連絡もできないし、仕方ないからいつ帰ってきてもいいようにご飯の下ごしらえをする。

ユノの経済状況がいまいちわからないから、食材は節約しながら、でも栄養バランスはきちんと考えて、出来上がったものからテーブルに並べていたら玄関のロックが外れる音がした。

おかえり、ユ

リビングのドアを開けて顔を出したぼくはそこで固まってしまった。

だって、その狭い玄関にはユノだけじゃなくてテミンもいたから。

瞬間、ぼくはここにいていいものかどうか、おかえりなんて言ってよかったのかどうか頭をかすめたけど、顔を出す前に戻れるはずもなく、黙って成り行きを見守る。

ただいま、バンビ。美味そうな匂いしてるな。今日は何作ってくれたんだ?

ユノは何でもないようにそんなことを言うけど、テミンは驚きで目も口も開いたまま、微動だにせず固まってる。

テミン、これでわかったろ?わかったらもう帰れ、ここには二度と来るな。

ユノは聞いたことのない冷たい声でそう言って、さっき入ってきた玄関ドアをテミンのために押し開ける。

そこまできてぼくはやっと、ユノがしようとしていることを理解した。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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